応急手当て(心肺蘇生法)

◆心肺蘇生法

心肺蘇生法とは、傷病者が意識障害あるいは呼吸・循環機能が停止もしくは、
これに近い状態に陥った時に、呼吸と循環を補助するため、気道を確保し、
人工呼吸と心臓マッサージを行ない、傷病者を救命するための手当てをいいます。

◇乳幼児に対する人工呼吸

乳幼児には、鼻をつまむのではなく、口と鼻に同時に吹き込んで人工呼吸をします。
吹き込む量は、傷病者の胸が軽く膨らむ程度です。
成人の場合よりも短い時間で吹き込み、3秒に1回の割合で続けます。

◇気道確保

◇小児に対する人工呼吸

意識に障害を起こした人は年齢、性別に関係なく気道閉塞を起こし、
呼吸が困難になったり、呼吸ができない状態に陥ることがあります。
したがって意識障害を認めたときは、必ず気道確保の手当てを行います。

『気道』とは、呼吸をする時、鼻や口から吸った空気が肺まで通る道のことです。
意識障害を起こすと、あごや舌などの筋肉がゆるみ、舌の付け根(舌根)が、
のどに落ち込んで気道を狭くし、次第に気道をふさいで呼吸困難となったり
窒息状態になる事が非常に多く起きます。 また、意識障害を起こした人は
口の中に血の塊や、吐いた物などの異物があっても、自分で吐き出すことが
出来ないので、気道閉塞を起こすことがあります。

人工呼吸の仕方は大人の場合と変わりませんが、人工呼吸の時間は、
4秒に1回の割合で行ないます。 吹き込む量は胸が膨らむ程度です。
吹き込む時間は、成人と同じく1.5秒〜2秒かけます。

正常な気道状態

異物による気道閉塞状態

舌根沈下による気道閉塞状態

★指交差法

意識の観察の結果、意識が無いと
判断した時は、口腔内を確認します。
口の開け方は、指を交差させて
親指を上の歯に、人差し指を
下の歯に当て開口します。

★指拭法

口腔内に分泌物や異物があれば傷病者の
顔を横に向けて、ガーゼやハンカチを指に
巻いて他方の指で口を指交差法で開口し、
口腔内の分泌物や異物を取り出します。
異物を除去する時、指で口の奥に
押し込まないように十分注意します。

★頭部後屈あご先挙上法
気道確保には幾つかの方法がありますが、
『頭部後屈あご先挙上法』が基本的な
方法といわれています。
人差し指と中指の2指をあごの先に当て、
もう片方の手を額に当てます。
あご先を持ち上げるようにしながら
額を静かに後方に押し下げるようにして
頭を後ろに反らせると、気道を確保できます。

★下顎挙上法
気道確保の最も確実性のあるやり方といわれている方法
ですが、下顎挙上法の気道確保は頭部側に位置して
行なうので、1人で心臓マッサージを行う場合は、
頭部後屈あご先挙上法を用います。両手で下顎を保持し、
これを上方に挙上し、気道を確保します。下顎を挙上するには
親指以外の4指を下顎上行枝(下顎角よりも耳側の下顎部)に
当てます。親指は両口角(口の端)のやや下の下顎部の所に
当てます。下顎上行枝に置いた手指で下顎を下顎歯列が
上顎歯列よりも前になるまで挙上し受け口といわれる形
にして頭部を後屈します。

★昏睡体位(側臥位)
気道確保を行なって呼吸がある時は、傷病者を
側臥位(体を横に向けた姿勢)とし、さらに気道確保を
維持できる昏睡体位をとらせます。
傷病者の足側になっている自分の足を片膝にして
傷病者の脇に位置します。
片方の腕を斜め下、または斜め上に開きます。
傷病者の肩と腰に手を当て、手前に静かに起こします。
傷病者の上側のひじを軽く曲げ、手の甲に
あごを軽く突き出すようにして乗せます。

◇人口呼吸法

傷病者を観察し、呼吸が止まっている人が人工呼吸の対象者です。
呼吸の観察方法は、頭部後屈あご先挙上法で気道を確保したまま実施者は
傷病者の口と鼻先に自分の頬を近付けます。 この時、傷病者の胸腹部の
動きを見るため顔は傷病者の胸の方に向けます。 耳で呼吸音を聴くようにします。
頬で傷病者が吐き出す息を感じるようにします。 つまり、呼吸の観察は
@目で胸腹部の動きを見る。
A耳で呼吸音を聴く。
B頬で吐き出される息を感じる。

この3つの感覚器官を生かして行います。 呼吸の観察は約5秒間行います。
それで呼吸があれば昏睡体位をとらせ、なければ人工呼吸を行います。

人工呼吸には、いろいろな方法がありますが最近は最も簡単で効果のある
呼気吹き込み人口呼吸法の口対口、または口対鼻の人口呼吸でおこなわれています。
頭部後屈あご先挙上法で気道確保します。 額を押さえていた手の親指と人差し指で、
鼻をつまみ鼻の孔をふさぎます。次に大きく口をあけて、空気を吸い込んだまま
傷病者の口をおおって、1.5秒〜2秒かけて吹き込みます。
吹き込み終わったら口を離して顔を傷病者の胸の方に向け、その動きを見ながら
吐き出される息を頬で感じ取り、気道が完全に確保されているかを確かめます。

最初に人工呼吸を行う時だけ続いてもう1回吹き込み、計2回吹き込みます。
以後、人工呼吸は5秒に1回の割合で吹き込んでいきます。
有効に吹き込むためには1回の吹き込みは、1.5秒〜2秒かけるようにします。
人工呼吸は呼吸が回復するまで、または医師や救急隊員に引き継ぐまで続けます。
人工呼吸がうまくできない原因の多くは、
@気道の確保が不十分
A口角からの空気の漏れ
B鼻の孔をしっかりふさがない

ことの、いずれかにあります。人工呼吸の合間に、時々脈拍を調べます。

※ 2005年末に救命救急方法の国際基準が変わったことを受け、
日本救急医療財団が作成した『日本版救急蘇生ガイドライン」によると、AEDを行なう場合
3回連続して電気ショックをかけていたところを1回にして、すぐ心臓マッサージを
始めるように改めた。さらに口対口の人工呼吸に抵抗がある人は心臓マッサージだけでも
いいことになった。人工呼吸に時間がかかりすぎて心臓マッサージが中断されるより、
マッサージを続けた方が救命効果が高いことがわかってきたからです。
 

◇心臓マッサージ

★成人に対する心臓マッサージ

☆脈拍の観察要領
心臓が動いているかどうかを調べるため脈拍を観察する時は頚動脈で観察します。
人差し指と中指を「のどぼとけ」の上に当てます。その指を自分の方に沿わせながら
軽く引き下げ、心もち指先を前方に押すと指先に脈拍を触れることが出来ます。
観察する時間は、約5秒間です。

☆心臓マッサージの圧迫位置
脈拍の観察を行なって、脈が触れないときは直ちに心臓マッサージを行います。
心臓マッサージを行なう為には、正しい心臓の位置を知らなければなりません。
誤った位置で行なうと肋骨骨折などの危険が生じます。
心臓の位置は胸の中央にある胸骨の下の、やや左側に位置しています。
心臓を圧迫する部位は、剣状突起と肋骨縁でできる切痕の指1本分頭側の位置です。

圧迫部位の確認要領は、実施者は傷病者の胸部側方に位置し、傷病者の
足側になる実施者の手の人差し指と中指の2本の指を、傷病者の肋骨縁に当てます。
その指を、傷病者の肋骨縁に沿って中央に移動させると人差し指が骨部に当たります。
この時、人差し指は剣状突起と肋骨縁で形成される切痕に達している事になります。
さらに、そのまま中指が切痕に達するまで指を移動させると、人差し指は胸骨上に
置かれた状態となります。そして、人差し指の置かれた胸骨の頭側の部分が圧迫部位
となります。この部位に手掌基部(手の付け根)を置き、その上にもう一方の手を重ねます。

☆心臓マッサージの要領
傷病者の胸に直角に正対します。そして膝は適度に開いて、つま先を立てて座ります。
次に心臓マッサージの圧迫位置を確認し、頭側になる手掌基部(手の付け根)を
胸骨と平行になるように置きます。さらに、もう一方の手を重ねて指先が
肋骨に当たらないように両手の指を上方に反らせます。この時、手首が固く指先が
肋骨に接している場合は、指を組み合わせ、上になった指で上方に反らせるようにします。

指先が肋骨に接していたり、胸の上で手を十文字に組み合わせていたり、
手の位置が右や左に寄り過ぎていたり、上下に寄り過ぎていたりすると、
心臓マッサージの効果が上がらないばかりでなく、肋骨を折ったり、肺や心臓を
傷つけたりするおそれがありますので、十分注意します。

実施者の肩の位置は、傷病者の胸骨と背骨を結ぶ線上になるようにして
腕をピンと伸ばします。
胸を圧迫する時の力の加え方が斜めになったり、肘を曲げてはいけません。
圧迫は上半身の体重が手の付け根にかかるように、成人では胸骨を
3.5p〜5p押し下げます。
圧迫した力を緩める時、手掌基部が胸から離れないようにします。
心臓マッサージは、1分間に80〜100回の速さでリズミカルに圧迫します

★小児に対する心臓マッサージ

☆小児の脈拍の観察要領

脈拍の有無」を観察する時は、成人の場合と同様に頚動脈で観察します。

☆小児の心臓マッサージの要領

10歳以下の小児には片手で2.5〜3.5p押し下げるように圧迫します。
圧迫回数は、大人の場合と同じ80〜100回の速さで行ないます。
あとは成人に対する要領と同じです。

★乳幼児に対する心臓マッサージ

☆乳幼児の脈拍の観察要領
乳幼児は首が太く短いため、上腕動脈か大腿動脈で脈拍を観察します。
心臓が動いているかどうかを調べるための脈拍の観察は、成人と同様に
約5秒間行います。 上腕動脈で脈拍を観察する時は、肩関節と肘関節の
中間部の内側部分で触知ができるので、そこへ人差し指と中指の2本を当てます。

☆乳幼児の心臓マッサージの要領
乳幼児の心臓マッサージの圧迫位置は、左右の乳頭を結ぶ線と
胸骨とが交差する部位より指1本分、足側の所です。
圧迫は、中指と薬指との2指で、1.5〜2.5p押し下げます。
圧迫は、毎分100〜200回の速さで行います。
心臓マッサージを行うときは、背中にタオルをいれたり、一方の手を
背中の下に入れ、胸骨圧迫時の力を支えるようにします。

            国内の新しい指針を出しています。
            日本救急医療財団  http://www.qqzaidan.or.jp/