排尿トラブルについて

40歳以上の7人に1人が排尿トラブルを抱えているというアンケート結果が
出ていますが、多くの場合トイレ習慣を変えたり、トレーニングを行なったりする事で
症状が改善する事があります。 排尿障害の三大症状というのは、頻尿、尿失禁、
排尿困難
ですが、それぞれ多様な症状を有しています。
頻尿とは一般に、「おしっこが近い」といわれる症状です。
成人の平均排尿回数は、日中、4〜6回で8回以上あれば昼間頻尿といい、
夜、就寝後に一回以上トイレに起きれば夜間頻尿といいます。
尿失禁とは、排尿を我慢できなかったり、本人の意思に反して
尿が漏れてしまうことです。 排尿困難とは、尿が出にくい状態です。
一回の排尿に50秒以上かかる。 尿に勢いがなく途中で止まってしまう。 
力まないと尿が出にくい。 残尿があるなどの症状があります。

ただ排尿トラブルといっても種類が多く、様々なケースがあります。
その中の一部の特徴を記して見ます。

◆腹圧性尿失禁

尿意がないのに、セキやくしゃみをしたりお腹に力が入った時にだけ
もれるのが特徴。 女性に多い理由は、身体の構造や妊娠・出産などに
関係している。 尿のもれる量が少ない場合は、
骨盤底筋トレーニングで、かなりの人が改善できます。

◆切迫性尿失禁

尿意を感じるとトイレまで我慢できず、たびたび途中でもらしてしまう。
強い尿意を感じたのに少量しか出なかったり、トイレから出るとまたすぐ
したくなったり,水仕事をしていると何度もトイレに行きたくなったり
するのが特徴。 性別や年齢に関係なく起こりますが、
特に高齢者に多くみられる。 尿意を感じてトイレに行くまでの間に、
膀胱が勝手に収縮して自分の意思に反して尿を出してしまう症状です。
軽度の場合は膀胱トレーニングで改善が期待できる。

◆前立腺肥大症

男性に多い。排尿に時間がかかる。 お腹に力を入れないと尿が出ない。
尿の勢いが悪い。 尿が途切れる。 残尿感がある。
トイレに行ってもまたすぐ行く。 間に合わないで、もらしてしまう。
夜中に何度(2〜3度以上)もトイレに起きる、などの症状。
尿がほとんど出ない状態だと、かなり進んでいるので早めの検査が必要です。

◆溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)

文字通り、「あふれるようにもれる」タイプで、男女とも高齢者に多い症状です。
強い尿意がなくても尿が少しずつダラダラとあふれ出してくるのが特徴です。
男性では前立腺肥大症の人、女性では子宮がんや直腸がんの手術を
した人に起こりやすい症状です。 溢流性尿失禁の場合、まずは検査を
受けて原因となっている病気などの治療が必要です。

◆急性膀胱炎

大腸炎などの細菌による炎症です。 頻尿、排尿痛や排尿直後の痛み、
残尿感、尿のにごり、などの症状が現れ、尿失禁や血尿をともなう事もある。
膀胱炎の血尿は排尿の終わりに出るのが特徴です。
多くの場合は、突然症状が出現する。 処方された薬で普通は
一週間前後で症状は軽減し、二週間程度で完治する。 

◆慢性膀胱炎

慢性膀胱炎は、膀胱に炎症があり、長く続く場合を言います。
炎症は、頻尿と不快な痛みが特徴で、激しいものから穏やかなものまで様々です。
排尿が終わる時にツーンとしみるような痛みを感じたり、
尿に血が混じる事があります。 それらの症状が激しくなったり
軽くなったりする事を繰り返すケースも多いようです。
症状が慢性化した場合、抗生物質を服用しても治り難いので、
慢性化する前に完治させたいものです。

◆腎盂腎炎

大腸菌などの細菌が、腎盂や腎臓に広がって炎症を起こす病気です。
女性に多く見られますが、安静にして抗生物質や抗菌剤で治療すれば
普通は一ヶ月前後で治癒します。膀胱炎を合併している場合は
頻尿、排尿痛、残尿感、尿のにごり、などで尿失禁や血尿を伴う事もあります。
重くなると38度以上の高熱が出たり、腰痛や全身の疲れなどがあり、
入院が必要な事もあります。

◆反射性尿失禁

膀胱に尿がたまると尿意がないまま反射的に膀胱が収縮して
尿が漏れてしまうタイプの尿失禁です。 
交通事故などによる脊髄の損傷や脳の障害などで起こる特殊な尿失禁です。

◆性器脱

女性に見られる症状です。 骨盤内の定位置より、子宮、膀胱が下がり、
膣の入り口から子宮や膣壁の一部が、こぶの様に出ている状態です。
子宮が脱出した状態を子宮脱と言うこともあります。
尿漏れが起こったり排尿しづらくなります。 
軽い場合は骨盤底トレーニングで進行を食い止める事が出来ます。

他に排尿のトラブル、排尿障害に関係する病気は糖尿病、腎臓病、膀胱結石、
膀胱がん、脊髄神経の病気、パーキンソン病、など等、多数あります。
生活の質を低下させない為に自分の身体を知り、
悩みや不便の改善策を探りましょう。

軽度の切迫性尿失禁、等のための膀胱トレーニング法

膀胱トレーニングとは、トイレに行きたくなっても、すぐにトイレに駆け込まないで
がまんする訓練です。 膀胱は比較的、伸び縮みできる袋状の臓器です。
尿漏れを心配するあまり、早め早めにトイレに行き続けていると習慣的になり
膀胱は、だんだん小さくなって尿がためにくくなります。逆に、我慢すると
膀胱は伸びて広がります。 はじめのうちは尿意を感じても、5分、15分と
徐々に我慢する時間を延ばしていきます。
一回の排尿量として200ml〜400mlの量をためられるまで訓練を続けます。
尿意は波のように寄せたり引いたりしながら、だんだん強くなります。
尿意をなるべく我慢し何度目かに尿意が寄せた所で、急がず我慢しながら
トイレへ行くようにします。 これを毎日繰り返すと、膀胱に尿を少しずつ
ためられるようになります。 トイレに行く間隔が3時間あけられるようになれば、
排尿を自分の意思でコントロールできるようになったといえます。
また、尿を我慢できるようになる為には、尿道をしめる筋肉である骨盤底筋を
強くしなくてはいけません。 女性であれば膣、男性はペニス(尿道)を
肛門と一緒に締めたり緩めたりする骨盤底トレーニングも
同時に行った方が良いでしょう。

腹圧性尿失禁や軽度の性器脱、等の為の
骨盤底トレーニング法

骨盤底トレーニングとは、尿道をしめる働きを持つ骨盤底筋(子宮や膀胱などを
支えている筋肉)を自分で鍛えることをいいます。

3ヶ月を目安に毎日きちんと行なうと腹圧性尿失禁の3人に2人は効果が
ありますが、この運動は治っても続けていく必要があります。
骨盤底は胴体の底にあたる部分で、「内骨盤筋膜」、「肛門挙筋」、「会陰筋」の
3層の筋構造がハンモックのように、膀胱や子宮などの骨盤の中にある臓器が
下がってこないように支える役割をしています。

トレーニングのポイントは、おなかに力をいれずに骨盤底、肛門、膣、尿道を
ゆっくりと締める感じをつかんで下さい。 わかりにくい場合は一度トイレで
排尿の途中におしっこを止めてみてください。 止めようとする時に
力が入る部分が骨盤底です。 肛門をしめるのは便を切る時のしぼる感じです。
いきんでしまうと逆効果です。 もし途中で力が抜けてしまっても
繰り返し力を入れてみてください。

★あお向けの姿勢〜朝・晩、布団の中でやりましょう。

@ あお向けに寝て、足を肩幅に開いてひざを立てます。
A その姿勢のまま、体の力を抜いて一分間に10秒〜14秒の割合で骨盤底を
  締める。(これがきつい場合は、最初は5秒ぐらいから始めてかまいません。)
B 肛門、尿道、膣全体をしめ、陰部全体をじわじわっと引き上げる感じです。
  おなか、足、腰などに力が入らないように意識しましょう。
C しめたまま10秒〜14秒(はじめは5秒程度)数えてから、
  残りの46秒〜50秒は、体からすっかり力を抜きます。
D ゆるめる、締めるの動作をゆっくりしたテンポで、できるだけ繰り返します。
  これを一回10セット(10分)ぐらい、一日数回行います。
  おなかに手を当てて腹筋に力が入っていないことを確認しながらやりましょう。

★椅子に座った姿勢〜家でテレビを見ている時や、バスや電車に
              乗っている時など、慣れれば何処でもやりましょう。

@ 椅子に深く座って、足を床につけて肩幅に開き、背中をまっすぐに伸ばします。
A 顔を上げて肩の力を抜き、お腹に力を入れないようにして
  ゆっくり肛門、尿道、膣全体をしめます。
B 基本形と同じように、一分間に10秒〜14秒引き締め、残りの
  46〜50秒はゆるめて休む動作を繰り返します。

★四つん這いの姿勢〜新聞や雑誌を床に広げて読むときなどに。

@ 床にひざを付き、ひじを立ててあごを支えます。
A この姿勢で体の力を抜いて、ゆっくり肛門、尿道、膣全体をしめます。
B 基本形と同じように、一分間に10秒〜14秒引き締め、
  残りの46〜50秒はゆるめて休む動作を繰り返します。

★つくえを支えにした姿勢〜キッチンで家事の合間などに。

@ 手足を肩幅に開いて腰の高さぐらいのテーブルなどのそばに立ちます。
A 両手も肩幅に開きテーブルに乗せます。 上半身の重みを両手にかけながら
  背中をまっすぐに伸ばし、顔を上げて正面を向きます。
B 肩とお腹の力を抜いて、ゆっくり肛門、尿道、膣全体をしめます。
C 基本形と同じように、一分間に10〜14秒引き締め、残りの46〜50秒は
  ゆるめて休む動作を繰り返します。

日本コンチネンス協会・・・・排尿トラブルの相談窓口として、排泄ケアに関する
                諸問題の解決方法と向上を目指すボランティア団体です。