腹式呼吸健康法

腹式呼吸の仕方

椅子に座って行なう場合、背もたれに背中を付けずに軽く足を開き、
背筋を伸ばして楽に座ります。
吸う息より、吐く息の時間を長くする事にポイントを置き、
鼻で呼吸をします。 息を吸ったときに、お腹を膨らませる様にします。
手は両ももに置いても、お腹に当てても良いです。 お腹に当てると
息を吸ったときの腹のふくらみが感じられてわかりやすいでしょう。
それから、この呼吸を3・4回繰り返します。 そしてその3・4回目の息を
吐き終わる時に体を前に倒して、さらに吐ききります。そして体を起こす
反動を利用して息を吸い込み、また3・4回の呼吸を繰り返します。

この体を前に倒すまでの、3・4回の呼吸をAとします。
このAを5回行ない、一セットとします。(約、一セットは3〜5分ほどです。)
一日に、10セットを目安に行なうようにしましょう。

寝ながら行う場合は、上向きに寝ます。 足を肩幅くらいに広げて
お腹に両手を置き、息を吸った時にお腹が膨らむ感じは
座位の時と同じです。
寝ながら行う腹式呼吸の場合、座位での時のような体を前に倒して
息を吐き切る動作はしないで、そのままで呼吸法を繰り返します。
やはり、吐く息の時間を長くするように意識して、3〜5分を
一セットとし、数セット(15分位)行ないましょう。

夜、寝るとき布団に入ってから行なうと、寝つきも良くなります。
横向きで寝ながら行なっても良いです。 この呼吸法は
どの様な場面でも行なえます。 テレビを見ながらでも、電車での移動中でも、
仕事の合間でも、ちょっとした隙間を見つけて行なってください。

腹式呼吸の効果

どのような効果があるかと言いますと、体内の静脈血は動脈血に比べると
二酸化炭素が多く、酸素が減少しています。ですので呼吸によって肺の
ガス交換が必要となります。生体が生き続けてゆく為には、体細胞は
エネルギーを必要とします。そのエネルギー源の主なるものは血液内の
ブドウ糖(血糖)です。 60兆といわれる体細胞はエネルギーを得る為に
血糖を細胞内へ摂り入れ分解します。 その分解産物は最終的には水(HO)と
二酸化炭素になり、このうち水は体内で利用価値があり、多くなれば尿あるいは
汗となって体外へ排除されます。血中の二酸化炭素は、肺というガス交換装置を
用いて体外へ排除されるべきものであるのですが、当然出るべき二酸化炭素が
浅い呼吸のため血液内に停滞すると、血中の二酸化炭素は水と結合して
炭酸となります。 CO2+H2O → H2CO3 → H+HCO3−

この炭酸(H2CO3)は、血液を酸性化してしまいます。
健康体での血液は弱アルカリ性ですから、酸性化するということは
体は不健全な方へ傾いていく事になります。 食物と共に摂り入れた食塩により
多少は血液の酸性度は緩衝されるものの、食塩は摂り過ぎても
弊害は大でありますから、やはり肺のガス交換は重要です。

腹式呼吸は横隔膜と大きなかかわりを持っています。
横隔膜の形をたとえて言うと、サッカーボウルを真二つに切り、その切り口が
下向きで、お椀を伏せたように胸腔と腹腔の間にあり、その上部(底)に
あたる所が中心腱となっています。
この腱の部分は伸縮しないのですが骨に付着していない為、中心腱が
上下に移動できるのが特徴となっています。 起始たる足場は、前方では
胸骨や肋骨の部であり、後方では腰椎等からの起始があり安定しています。

呼吸筋としての横隔膜は肺のガス交換に重要な役割を演じていると共に、
心臓に対しても驚くべき貢献をしています。
心臓の働きで最も重要な事は、栄養分と酸素を多く含んだ血液を全身の
体細胞に送り届ける事で、その為には使用済みの汚れた血液をかき集め
肺に送らなければならないのですが、その静脈血に対して横隔膜の
収縮下降は、もっぱら静脈血ポンプとして働き、心臓を助けています。
人間は一日に7,200リットルの血液を必要とします。
ドラム缶にして36本分です。心臓は昼夜休まず血液を送り続けていますが
製造する場所ではないので送り出す分を、かき集めなければいけません。
運動して体を動かせば静脈血が心臓へ還りやすくなりますが、
横隔膜は腹腔内の静脈血をも心臓へ送り届けるのです。
横隔膜の活発な動きは、心臓自体のマッサージをも行ない、冠血流を
活発にします。 一生休みなく働き続ける心臓を、いたわる為にも
呼吸を見直すことは、たいへん良いことです。

世の中には、気分転換の上手な人とそうでない人がいますが、
努力次第では上手になる事は不可能ではない、と断言できます。
不安、心配、恐怖といったものが人生にはつきものですが、
それらによって心が占拠されると、呼吸もまた浅く、弱く、力の無いものと
なりがちです。そのような呼吸が続くと、生体を構成している細胞の生命力を
低下させる事になります。 健康で生活する為には全身の細胞の
バイタリティーを高めてやる事が必要です。 息を長く出す事は、
雑念妄想を脱落させる不思議な力を持っています。
同時に不安、心配も次第に処理されていきます。
下腹部に自然に腹圧がかかり、腹腔内にある太陽神経叢をはじめ
自律神経叢が4つほどありますが、いずれの失調も調整されていきます。
このように正しい呼吸法を行うことにより、諸病克服のみならず、それらを
未然に防ぐ事も可能となり、人それぞれの人生に多大な貢献をします。
ぜひ、試してみてください。